RCサクセション「ラプソディーNaked」

RHAPSODY NAKED (DVD付)

RHAPSODY NAKED (DVD付)

聴きました。RCサクセションの「ラプソディー Naked」。1曲目の「ようこそ」のイントロを聴いた瞬間に頭の中が高校1年の時代に飛んでいった。退屈でどうしようもなかった高校時代。モノクロのぼけた記憶の中で色がついているのは、音楽の話を楽しんだ何人かのクラスメイト(「音楽中心日記」のAndyさんもその一人で、The Whoを教えてくれた恩人です)の顔と、出会った音楽だけである。RCサクセションも、そんな色のついた思い出の一部。

洋楽のかっこ良さにどっぷり漬かり始めていた当時の自分にも、RCサクセションのブレイクは特別なものがあった。巻き舌で歌うわけでもなく、シャウトしていても日本語の歌詞が聞き取れ、理解できる。ローリング・ストーンズオーティス・レディング(その頃はまだオーティスの音楽は良く知らなかったかな?)からの影響を消化しながら、新しい音楽としての個性と自己主張があった。今聴いても全然古くなく、むしろその瑞々しさに感動する。

アルバムは持っていなかったけど、あの時代はエアチェックしていれば大体の曲は聴けたし、(宇崎竜道のU局の番組もそのひとつだったと思うが)テレビでライブを観る機会もあった。金曜日の「サウンドストリート」にキヨシローとチャボが登場して、無愛想な返答に終始したのもあの頃だった気がする。

オリジナルの「ラプソディー」制作時のディレクターが書いた解説はとても面白い。当時のRCの勢いと周りの熱狂、ライブ録音をかなり編集して「ライブ版ではない」アルバムとして発売したこと、そしてNaked発売に至った経緯。当事者ならではのリアリティで迫ってくる。

ジャムのライブに行けなかった悔しさを以前の日記で書いたが、このNakedを聴いているとまた悔しい思いが・・・。「ようこそ」「エネルギー Oh エネルギー」「ブン・ブン・ブン」「スローバラード」「雨上がりの夜空に」・・・。何をしていても(試験問題を解いていても)頭の中で音楽が鳴っていたあの頃に戻ってしまった。当分の間、気分はキヨシローになりそう。昔、勉強がはかどらなかったように、来週からの仕事に影響が出そうで怖いなぁ。

素晴らしい仕事に敬意(The Who Tommy全曲訳)

年末から毎日楽しみにしているkomasafarinaさんの「TOMMY」全曲訳(id:komasafarina)は、次回が最終回とのこと。キンクスの「ソープオペラ」の時もそうだったが、単純な歌詞の日本語訳にとどまらず、様々な角度から歌詞の意味・作者の意図に深く鋭い洞察を与えている。しかも全曲である。凄い! The Whoのファンは是非ご覧ください。

今日は車の移動中に「Live At Leeds - Delux Edition」のDisk 2で、ライブの「TOMMY」を満喫した。Live At Leedsはオリジナル版は収録曲が少なかったが、Delux Editionになって当時のThe Whoの全貌が良く分かるようになった。そして、何よりもTOMMYをちゃんとした(ゴメンなさい)演奏で聴けるのが最高である。

もうこの世に存在しないリズム・セクション二人(特にキース・ムーン)による演奏が壮絶。この二人を中心に、奇跡のような瞬間がいっぱい詰まったこのアルバムは家宝です。

Live at Leeds -Deluxe Edition

もうちょっとサム・クック

前回の日記で触れた A Change Is Gonna Come についてもう少し。死後シングルとして発売された時は以下の一節が削除されていたそうで、アルバム「Ain't That Good News」に入っている方が完全版。

I got to the movie.
And I go downtown.
Somebody keep tellin' me.
Don't hang around.

この一節が無くても、「長い時間がかかったけど、変化は来るんだ」「うん、きっと来る」「長く続けられると思えない時もあったけど、今は前進していけると思う」という歌詞と時代背景から、この曲が公民権運動と呼応するように作られた希望の歌であることは分かる。

でも、上の一節があると歌のイメージはぐっと先鋭的になる。たった四つのセンテンスだが、その前の箇所で歌われる

It's been too hard livin'.

の意味を具体的かつ簡潔に伝えている(でも、Don't hang around.のDon'tの部分が随分控えめに歌われているなぁ)。

このアルバムを発売して数ヵ月後に、不可解な事件(安モーテルで正当防衛を理由に射殺された)で亡くなったサム・クック。JFKもキング牧師も簡単に暗殺された時代だ。

自分の命と引き換えに大切な曲が脚光を浴びたが、肝心な一節が削除されるとは・・・。天国のサム・クックは憤慨したたろうか? それともシングルとして発売されたことを、A (small) change has (finally) come. と喜んだだろうか?


Mr.Soul サム・クック

Mr.Soul サム・クック


つい最近になってやっと読み始めたこの本は、サム・クックのアルバムと同じくらい大切です。

サム・クックも冬に思い出す

この正月休みにはサム・クックが聴きたくなり、またレコードやCDの棚を漁ったら、こんなアルバムが出てきた。

  • Sam Cooke with The Soul Stirrers (51年〜57年の録音)91年発売のCD
  • Twistin’ The Night Away(62年発売)86年の再発LP
  • Night Beat (63年発売)95年の再発CD
  • Live At The Harlem Square Club, 1963 85年発売のLP
  • Ain’t That Good News (64年発売) 86年の再発LP

うーん。これじゃサム・クックの魅力の半分くらいしか知らないかもしれない。有名な曲がきちんと網羅されたベスト版を買おうと思っていたのに、またいつの間にか忘れてしまっていたようだ。

Live at the Harlem Square Club 1963

サム・クックで思い出されるのは、Live At The Harlem Square Club, 1963発売時(85年)の大興奮だ。あれは、NHK FM「サウンドストリート」の山下達郎氏だったと思う。アルバムの全曲をノンストップで流していた(このアルバムを紹介するDJは誰もが興奮していた)。その興奮につられて、大急ぎでカセット・テープをセットして録音したものだ。会場を支配する圧倒的なボーカル(レコードとは違ってシャウトしまくり!)、ゴスペル教会そのものの興奮と大合唱。あまりの凄さに感動して泣きました。学生時代、名古屋の六畳一間のアパートで。


31年生まれ。51年に人気ゴスペル・グループに参加し、圧倒的なボーカルと甘いマスクでゴスペル界のアイドルに。看板シンガー兼作曲家として57年まで活躍。そして転身。ミュージシャンの権利に意識的でビジネスの才にも長けたサム・クックは、大手RCAでのヒット・メーカーとしての仕事と並行して、独自にレーベルを立ち上げ、若いミュージシャンを育て世に送り出す。これは、その後の才能ある野心的なミュージシャンのモデルになったはず。マルコムXとの親交。ルーツを意識したブルース・フィーリング溢れるアルバムの制作(Night Beat 63年)、公民権運動と呼応するA Change Is Gonna Come(64年)など、晩年はチャレンジが続いていただけに33歳の死が残念でならない。皮肉にも、その後のモータウンやアトランティック、スタックスらによる世界的なアメリカ黒人音楽の成功に加わることなく一生を終えるとは・・・。

Nightbeat

Night Beatは大好きなアルバム。明るく元気のよい有名なヒット曲とは異なり、全体の統一感が意図されたブルージーなアルバムだ。ホーンもストリングスも無い、ピアノやオルガン(ビリー・プレストン)を中心とした最小単位のバンド。控えめな演奏と、際立つ丁寧なボーカルの関係は、たとえばニック・ロウの近年の作品を思い出す。自作曲「Laughin’ and Clownin’」「You Gotta Move」の素晴らしさは言うまでもなく、自分の色に染めたカバー曲も全部良い。アーティストとしての才能が際立つアルバムだけに、その後の飛躍の道を絶たれたのはとても残念だ。

サム・クックを聴いていたら、今度はオーティス・レディングが聴きたくなった。また続く・・・。

今年もあっという間に過ぎた1年だった。特に父の容態が悪化し始めたここ数ヶ月は目の回るような日々だった。

今月から父が在宅治療から入院に変わり、体の痛みを和らげることに力を入れる末期の治療となった。1日前の記憶さえ無い父だが、まだ会話ができる。数日前までは気丈なところもあったが、今日は「毎日、今日が最後かと思って生きとる」と話していた。

一昨日は妹が帰省で混雑する中、2歳の子供を抱えて面会にやってきた。30分の面会と、私と母との昼飯ですぐ岐阜に帰っていった。意識のある内にと思い急いだが、何とか年が明けるところまで持った。

来年はどんな年になるだろう。春には娘達がそれぞれ中学生、小学生になる。自分も家族も健康で良い1年になりますように。仕事は正念場。仲間の力を最大限引き出して、新しい事業を成功させたい。この日記も続けて、良い音楽をいっぱい聴きたい。

この日記を読んでくれた皆さんの2006年も良い年になりますように。

冬が来ると聴きたくなるスモーキー・ロビンソン

Quiet Storm

ふと突然思い出し、スモーキー・ロビンソンのアルバムを引っ張り出してみたら結構あった。確か「Quiet Storm」の前後にまだ作品があったような気がするが持っていない。

・Smokey (1973)
・Quiet Storm (1975)
・Smokin' (1978)
・Where There's Smoke (1979)
・Warm Thoughts (1980)
・Being With Your (1981)
・Yes It's You Lady (1982)

やはりディスコ時代を通り抜けた後のアルバムは軽いなぁ。プロデュースや作曲で他人の比重が高くなる。それでもBeing With YouやCruisin'といった名曲には「さすがスモーキー!」と唸ってしまう。やっぱりスロー&メローでしょ。

アルバムのお気に入りは何と言っても「Smokey」と「Quiet Storm」(傑作!)。比較的アップテンポな曲でもぐっと腰の据わったグルーブを堪能できる。スモーキーにしてはブルージーな雰囲気を感じるのは、まだニューソウルの時代だからか。特に「Quiet Storm」のBaby That's BackatchaとLove Lettersにはそれを強く感じる。

軽快なホーンのアレンジを聴くたび思い出すのは、ジャム解散前後のポール・ウェラーが尊敬するアーティストにスモーキーの名前をあげていたこと。「Smokey」に入っている大好きなFamily Songの雰囲気はそのまんまスタイル・カウンシル。そう言えば、スティービー・ワンダーの黄金時代のアルバムを聴いていても「おっ(うわっ)スタイルカウンシル」と思う瞬間がある。

昔同僚だったアメリカ人(一緒にテンプテーションズやネビル・ブラザーズの来日公演を観に行ったっけ)が、アメリカ帰国後にスモーキーの伝記を送ってくれた。当時(もう15年くらい前のこと)半分くらい読んだだけでそのまま本棚の奥。伝記の前半しか読んでいないのだから当然だが、スモーキーの生い立ちは分かって面白かった。

写真を見れば分かるように、スモーキーは肌の色が薄い。黒人コミュニティーの中ではちょっと異質な存在で、居心地の悪さを感じることがあったようだ。スモーキーの音楽には、モータウンを成功に導いた60年代からずっと人種的な偏見を軽く飛び越える普遍的な明るさや優しさがある。アイデンティティの苦悩を表現のパワーに変えていくところが、プリンスに似ているような気がする。

もう一つ。これも昔の話だが、アメリカに出張した際にホテルでテレビを観ていたら、クイズ番組にスモーキーがゲスト解答者として出ていた。 一流のアーティストでモータウンのVice Presidentでもあるスモーキーがクイズ番組かよ? 一瞬頭がくらくらしたが、何ともこれが自然なのだ。この自然体の優しいオーラこそがスモーキーの魅力だと納得した。さすがにプリンスはクイズ番組には出ないだろうなぁ(笑)。

せっかくいっぱい書いたのにうっかり全部消してしまった・・・。がっかり。エディターで下書きしないとダメですね。日記をサボっていた間に聴いたアルバムや読んだ小説を全部書き出していたんですが。時間も無いので、また気が向いたら来週にでも。はぁ、ついてない。

聴いたアルバムは、スモーキー・ロビンソン、スティービー・ワンダー、ドリフターズストーンズ、ジミー・スミス、スピナーズ、ボビー・ブランド。こんなところ。小説は石田衣良。今更ですが池袋ウェストゲートパークの2作。通勤中に読みまくり。凄い作品だった。ドラマも良かったけど、原作は最高。